[2025/5/23~2025/6/24]田房成雄作品展

[2025/5/23~2025/6/24]田房成雄作品展

帰らぬ風景

古家が取り壊されて更地になると、何とも言えないさっぱりした気分になる。それは素敵なことだ。新しい世界の始まりを暗示しているのだから。
ところで、確かにそこにあったはずの風景や人物は、一体どこへ消えてしまうのだろう。
今朝の散歩中に、まちがいなく実在したはずの物が消えていく、その行き先を見たような気がした。
淀川の堤防の散歩道は、早朝のやわらかな光にあふれていた。たまにすれ違う人の輪郭も、逆光の中でうるんで見えた。
ゴルフ場の端で折り返した頃から、何となく足もとを重く感じていた。堤防は京都に向かってやや登りの勾配があるから、そのせいだろうかと思ったが、そうではなかった。
少しずつ自分の身長が低くなっていることに気がついた。地面が跳ね返す五月の光のせいかとも思ったが、これは視覚からくる感覚ではなく、皮膚感覚に近い体感から来ているようなのだった。進むにつれて足の先から地面に溶け込むようにすり減っていくのだ。おろし金の上の大根になった気分だった。大柄なおじさんがブツブツ独り言を言いながらすれ違った時など、膝の上まで急速に溶けてしまった気がした。このまま歩き続ければ、帰宅するころにはぼくの体はすっかり消え去って、更地になっているにちがいない。 

 雨後 15号F 油彩

 淀川にて 50号F 油彩

 雪の朝 30号F 油彩

 これら3点は同じ田んぼを描いたものですが、現在更地です。霊園になるようです

 新作『マリーの朝 40号F ガッシュ水彩』は『笠地蔵』とコラボさせてみました。期間中、作品は差し替え予定です

 



アートギャラリー まなりや
大阪府枚方市。京阪本線 牧野駅から徒歩3分のアートギャラリー。

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